知らない人のお願い

学生時代、学校の前で「財布を落としてしまって家に帰れなくなってしまった。申し訳ないけど電車賃を貸してほしい」とお願いされたことがある。
見ると路上生活一歩手前というような感じのお婆さんだった。今思えば突っ込みどころ満載だったのだけど、なけなしのお金を渡した。お婆さんは「ありがとう、ありがとう」と言いながら足早に去っていった。

今日会社から駅へ向かう途中に知らないおじさんに呼び止められた。
どうやら定期を落としてしまったらしく、帰りの電車賃を貸して欲しいとのこと。
近くに交番もあるし、駅で事情を説明すれば電車も乗らせてもらえるのではないかと思ったが、少し考えた後、百円玉を何枚か渡した。おじさんは2回ほど礼を言った後、歩いていった。

何故かとても虚しい気分になった。